わたしと店のはなし 第16回 自然体を大切にする花屋[花 小森]


「私にとって花は、同志でもあるし、人生を短縮したような“生”をギュッと見せてくれる存在。先輩みたいな」と、花への想いを語るのは「花 小森」の店主・梅田佐織さん。以前は美容師だったという梅田さんが職場近くの花屋に憧れ、花の世界に足を踏み入れてから26年の年月が経つ。

「そのとき本当にいいなと思った花を仕入れています」。梅田さんの花選びはインスピレーションを大切にしている。「品種改良もあんまりされていない、作られすぎていない花が好きですね」。色鮮やかな花を揃える一般的な花屋と異なり、「花小森」に並ぶのは野に咲いているようなナチュラルな花たち。

ディスプレイも他の花屋とは一風変わった印象を受ける。「冷蔵庫がないんですよ。それはお店をやり始めたときから決めていて」。冷蔵庫に入れておくと花もちは確かによくなるが、購入し持ち帰るとすぐに弱ってしまうという。「花にもお客さんにもいいことがない」と冷蔵庫を置かない選択をした。それだけでなく、店内には電気もついていない。「自然光の中で見る花が好きで。雨の日とかは最悪ですけどね」と梅田さんは笑う。自然光に照らされた花たちはどこかいきいきしているように見え、このディスプレイには梅田さんの花へのリスペクトが溢れていることがわかった。

現在は日本の花を中心としたラインナップだが、かつて梅田さんが手掛けていたのはフレンチスタイルだったという。「生け花やお茶を習って。そこから日本文化に惹かれだしたんです」。その変化によって選ぶ花も作るものも、何もかも違うものになっていったそう。「そのとき本当にいいなと思ったものを」、それは花選びにとどまらず、お店のあり方や梅田さんの人生までにも通じていたのだった。「流れに逆らわないこと。結局それが一番うまくいく。気持ちが整っているのならば…いい方向にしか進まないですね」。自然光に包まれながら梅田さんは優しく微笑んだ。

2019年8月オープン。店舗に並ぶ花のほか、アレンジメントや花束の注文にも対応


「食堂 山小屋」や「Ameargari」が並ぶ古民家の一角に2019年8月オープン。店内奥の畳スペースでは、「花の会」や「クリスタルボウルヒーリング」、「トランスフォーメーションゲーム」などのワークショップや展覧会も開催。梅田さんセレクトの書籍の販売も。

店内に並ぶ梅田さん厳選の花器や籠も購入可能。籠は力の加わる下の面に竹の節が来るように作られているなど、細部まで美しい手仕事に感動。

店舗に並ぶ花のほか、アレンジメントや花束の注文にも対応。「なんとなくの形式ではなく、心からお花を送ることを喜べるあり方になったらいいな」と語る梅田さん。きれいに赤く熟したナナカマド(800円~)。花についてわからないことがあれば、ぜひ尋ねてみて。