中東のスパイス香る、ファラフェルでモーニング

鴨川と高瀬川のあいだ、旧五条楽園の一角。2021年にオープンしたレバノン料理店「汽 [ki:]」では、フランス料理の世界で腕を磨いたシェフが、ファラフェルやシャワルマなどの中東料理をカジュアルに提供している。
朝と昼の営業では、それぞれメインを選べるプレートを用意。モーニングは、スモークチキン、ファラフェル、またはそのミックスから選べる。ファラフェルとは中東発祥のひよこ豆のコロッケのこと。「汽 [ki:]」では、ひよこ豆にそら豆と炒めた玉ねぎをたっぷり加え、しっとりジューシーな食感に仕上げている。クミンやコリアンダーの香りが、オリエンタルな気分を誘う。
ランチでは、ファラフェルのほか、スパイスでマリネしたチキンやビーフを薪や炭で焼いたシャワルマ、季節野菜のグリルも登場。ヴィーガンから肉好きまで満足できるメニューを揃えている。
メインも副菜もたっぷりと、ピタパンに挟んで召し上がれ

副菜はすべて動物性食材不使用。フムス(ひよこ豆のペースト)、大豆でつくる植物性のアイオリソースに、野菜のマリネやピクルス、香り豊かなハーブ類が彩りを添える。それぞれの素材の味を活かしながらも、一緒に食べても見事に味わいが調和する副菜に、ベテランシェフの技が光る。ピタパンに、メインと副菜をたっぷりと挟み、豪快に頬張りたい。
スパイス遣いが秀逸な、自家製コーディアル

ドリンクは、スパイスを使った自家製コーディアルもおすすめ。コーディアルとは、ハーブやフルーツを漬け込んだ滋養豊かなシロップのこと。鮮やかなオレンジ色が映えるマンゴーのコーディアルは、ライムの酸味とチリの刺激が絶妙でクセになる味わい。
大原野の自家菜園で収穫する旬の恵み

料理に使用するハーブや野菜の多くは、京都・大原野の自家菜園でシェフ自ら収穫。ミント、ディル、イタリアンパセリ、パクチーなどのハーブや旬野菜が、料理を豊かに引き立てる。
資源もおいしさも無駄にしない、サステナブルな工夫

また「汽[ki:]」では、食品ロスや資源循環への意識も高い。規格外の薪を活用し、使い終えた薪や炭の残り火でスモークチキンを作る。さらに、調理中に出た野菜くずを炭にしてピタパンに混ぜ込んでいるから、見た目もユニークなグレーに。そんなひと工夫も、この店の大切な個性。
大テーブルを囲んで、人と人が繋がっていく

「限られた人しか来られない高級店ではなく、誰もが気軽に訪れて、繋がれる場所にしたい」——そんな思いから生まれた、店の象徴とも言える大テーブル。肉好きもヴィーガンも、宗教や国籍の異なる人も、観光客も地元の人も、ここで肩を並べ、食卓を囲む。その光景は、理想の世界の縮図のよう。
旧五条楽園の古民家を改装。自然体の笑顔が生まれる

五条通から木屋町通を南へ徒歩約2分にある、高瀬川沿いの古民家を改装。店内は、照明を灯さず天窓から差す自然光のみ。はじめは暗く感じても、やがて目が馴染み、次第に心地よさに変わっていく。異国の香りとやさしい光に包まれ、大テーブルの輪の中で自然体の笑顔が交わる——それが「汽 [ki:]」の日常の風景。