長岡京で出会う、本格中国料理と特大唐揚げ

店の看板、圧倒的人気を誇るメニュー。唐揚げ定食1,320円

長岡京市役所のすぐそば、路地を入った先に佇む中国料理店。鮮やかなグリーンの扉を開け、暖簾をくぐれば、真摯に料理と向き合う店主と、華やかで愛らしい笑顔の奥様が迎えてくれる。

店主・大澤さんは中国・山西省の生まれ。幼い頃、家には料理人がいて、食卓には上流階級向けの華やかな料理が並んでいた。厨房で彼らの仕事ぶりを観察するのも楽しみだったという。戦後に帰国し、さまざまな職に就いたが、心を離れなかったのは中国で味わったあの料理だった。頭の中で何度もレシピを反芻し、時には家族や友人に振る舞いながら年月を重ね、還暦を迎えた頃、ついに夢を形に。記憶に刻まれたレシピをベースに、本格的な中国料理をこの店で供している。

数あるメニューの中でも、「唐揚げ」は訪れる客のほとんどが注文する看板料理のひとつ。まず目を奪うのは、拳ほどもある塊がどーんと皿に鎮座する圧倒的な存在感。ランチでは、この巨大唐揚げが3個に、ご飯、スープ、小鉢2皿が付く定食で味わえる。

 

岩塩と超高火力が生む、軽やかなおいしさ

揚げたての衣から立ち上る香ばしい湯気に、食欲は一気に高まる

大澤さんが覚えている本格的な中国料理は、一般的に思い描く「油たっぷり」で「濃い味」の中華料理とは全く異なるもの。「済公亭」の味の核は、ほんのりと甘みを帯びた中国産の上質な岩塩。これを基調に、風味豊かな紹興酒や本場の調味料を重ね、旨みは豊かに、しかし素材を生かしたあっさりとした味わいに仕上げている。

もうひとつの要となるのが火力。超高火力で一気に仕上げることで油切れがよくなり、揚げ物もカラッと軽やかな口当たりに。また、食材はすべて注文が入ってからカットし、肉や魚、野菜が持つ新鮮なおいしさをそのまま皿の上へ届けている。

驚きの大きさ!柔らかさの秘密は、肉に丁寧に切り込みを入れる下処理にあり

「唐揚げ」には、店主自ら筋や余分な脂をていねいに取り除いた鶏モモ肉を使用。高温の油でさっと6分ほど揚げると、衣はサクッと香ばしく、肉はふわりとやわらかく仕上がる。噛めばぎゅっと旨みが溢れ、箸で持ち上げるのも一苦労するほどの大きさながら、驚くほど軽く食べられる。

下味はあくまで控えめ。添えられた塩コショウを好みの加減で振って、自分だけの味わいを見つけてみて。驚くのは唐揚げをすべて平らげた後、皿にほとんど油が残っていないこと。この油切れの良さこそ、「済公亭」の唐揚げが誇る「軽さ」の証。ぜひ、唯一無二の食べ心地を体感してみてほしい。

 

昼も夜も心ゆくまで。本場の味とボリュームに満たされる

皿からあふれんばかりに盛られて大ボリューム。鶏むね肉の甘酢定食1,320円

ランチの定食は、「唐揚げ」「魚の甘酢」「鶏むね肉の甘酢」の3種類。甘酢餡は、店主が幼い頃に味わった記憶をもとにアレンジしたもの。ケチャップと酢をベースにした餡に、シイタケ、ピーマン、玉ねぎなど炒めた野菜を合わせている。「鶏むね肉の甘酢」は、唐揚げを餡に絡めた一品。鶏むね肉はしっとりと柔らかく、たっぷりの餡で白飯との相性も最高。野菜はシャキッと瑞々しく、食感のコントラストも楽しい。

夜は一品料理が揃い、定番の「唐揚げ」はもちろん、「水餃子」も人気を集める。初めて目にした人はその大きさと食べ応えに驚くそう。中国には「民以食為天」ということわざがある。食べることは生きる上で最も大切なこと、という意味を持ち、「済公亭」でもその思いを大切に、どのメニューも味に妥協せずボリュームもたっぷり。お腹も心も満たされる、至福の食事時間を過ごせる。

 

アートと中国の風情に包まれる、店主こだわりの店内

ほっと心落ち着くアットホームな店内。ひとつひとつの装飾にも興味を惹かれる
「(店の料理がおいしければ)ぜひ、友達に伝えてください」という意味を持つそう

店主はこの店を始める直前に、中国への留学を経験。店内の装飾には、そこで求めたり、作ったりしたものも。「君若満意請告訴朋友」の看板は、デザインなどを指示して中国の学生に作ってもらったオリジナル。対になる看板もあるので、気になる方は訪ねてみて。藤田嗣治をはじめ有名無名を問わず、店主が集めた絵もたくさん飾られていて、店内を見渡せば、店主のあふれる才能と趣味の深さも垣間見える。

 

味と人柄に人が集い、20年以上愛され続ける店

中国の名僧「済公」と、日本語読みの「さいこう(=最高)」を掛けてつけた店名

阪急長岡天神駅東口から徒歩5分。近くの市役所職員をはじめ、常連客が多く、遠方から足を運ぶ人も少なくない。中には東京から月に一度通う人もいるとか。郊外の立地ながら、20年以上にわたり多くの人に愛されてきた。

「うちは、いいお客さんに恵まれています」と店主夫妻はいう。もちろん、本格的な中国料理のおいしさに、何度も通いたくなるのも頷ける。しかし、それだけではない。訪れる客ひとりひとりへの細やかな心遣いにあふれた夫妻の温かな人柄と、目の前に供される料理からひしひしと伝わる愛情。そのどちらもが、多くの人を惹き寄せている。