助六寿司の名店で見つけた、新しい京みやげ|a soubenir of kyoto No.123

百万遍の交差点から北西へ徒歩5分。昔ながらの風情が残る住宅街の町家に、小さな看板を掲げて営む「万里小路 中村屋」は、知る人ぞ知る助六寿司専門店。花街、古典芸能や繊維関係など京都の各界から贔屓にされ、伏見稲荷大社の御用達としても長く知られる。
元芸妓の初代が、縁のある祇園町でおはぎの行商を始めたのが70余年前。ある時、得意先から「夜食になる軽食を」と頼まれ作ったいなり寿司が好評を得て、やがて、いなりと巻きを詰めた助六寿司を専門とするように。現在は3代目夫妻とその長男である4代目が、共に店を切り盛りする。
店の看板である助六寿司は前日までの予約制で、日持ちもしない。「もっと手軽に、京都の味を持ち帰れるものを」。そう考えた4代目が2022年に発売したのが、いなり寿司のおあげを刻んで瓶詰にした「中村屋のおあげ」。
飴色のおあげは、じっくり炊き上げた甘辛味。

店奥の厨房に並ぶのは、創業当時から使い続け、風格を増した羽釜。現在もおあげを炊くのに欠かせない道具だ。おあげ作りは、油揚げを熱湯で煮てから湯洗いを重ね、丁寧に油抜きするところから始まる。味付けをしたら、炊いては冷ましを繰り返し、2~3日かけてじっくりと味を染み込ませてゆく。味の要は、御所西『澤井醤油本店』の濃口しょうゆ。砂糖を加えた代々受け継ぐ秘伝の配合が、他では出せない味わいをつくる。

しっかりと芯まで味が染みたおあげは、まろやかな醤油の香りと甘さが際立つ。濃い味付けながら、丁寧な下処理によって、後口は潔くキレがよい。ひとつ摘まめば、もうひとつ、もうひとつ…と、気づけば箸がとまらない。
ひと口大に刻んであり、蓋を開けてすぐに食べられるのがうれしい。白飯やうどんにのせるのはもちろん、調味料としても頼れる存在。卵焼きや衣笠丼など卵との相性が抜群。切干大根やひじき煮なら、出汁と少しの醤油を足すだけで、味が決まる。夏には、練胡麻と酢を足してキュウリや茗荷と和えるのもおすすめ。4代目が考案したキャッチコピー「お家ご飯の秘密兵器」――使ってみればその言葉にうなずくばかり。
「助六」が目印。店頭限定の希少な逸品

味のあるタッチで歌舞伎の「助六」や隈取の顔などを描いた折箱の包み紙は、長きにわたり助六寿司の顔として親しまれてきた。その図案を瓶詰のラベルにも採用している。京都通の人なら、ひと目で「あの中村屋さんの」とわかる印象的なパッケージ。

じっくり炊き上げたおあげを刻み、瓶に詰め、ラベルを貼るまで、すべての工程を手作業で行っている。それゆえ、仕上がるまでは約1週間かかり、常に在庫があるとは限らない幻の品。通販や発送は行っておらず、購入は店頭のみ。訪問前に電話で在庫を確認しておくのが安心。
