お酒が飲めて、餃子も食べられる喫茶店。

手前から「セルリー焼餃子650円」「羊焼餃子700円」、奥は「プレーン焼餃子550円」。「苺のショートケーキ650円」と「サッポロラガー中瓶700円」

五条壬生川近くの路地に佇む「みこ」は、お酒の飲める喫茶店。他と少し違うのは「餃子が食べられる」という個性を持つこと。メニューにはお酒に餃子とアテ、そして洋菓子や和菓子が並び、もちろんコーヒーも用意。昼から夜までの通し営業だから、過ごし方は自在。餃子とご飯でランチもできるし、コーヒーとあまいもので午後のおやつタイムを過ごすのも、はたまた時間を気にせずビールや日本酒とアテを楽しむのもいい。

 

その日のメニューは黒板参照。奥で餃子を焼いているのが店主・みこさん

店主・みこさんはパティシエとして洋菓子づくりを経験した後、和菓子に興味が湧き転向するも、やがてコロナ禍に見舞われる。そして、家に籠る日々に始めたのが「餃子作り」だった。「みこ」の餃子の特徴はなんといっても皮にある。

餃子作りは独学で、独自に研究を重ねた餃子の皮のレシピがぎっしり詰まった自作の”粉ノート”なるものもあるそう。洋菓子作りとも通ずる「生地作り」への情熱は、餃子の皮を1gの誤差もなくきちんと計り1枚ずつ手伸ばしする姿勢にも見て取れる。みこさんはあくまでも「そうするほうが楽なんです」と微笑むけれど。

 

生地がおいしい焼餃子は餡も包み方もいろいろ

焼餃子の皮は小麦粉と水だけでなくいろいろなものが独自の配合で入っているそう

店では焼餃子と水餃子を用意し、それぞれ皮を変えて提供する。焼餃子の皮には油を織り込んで作るパイ生地に倣った製法を採用。餡には、亀岡市の福井農園から仕入れるものをはじめ京都の地野菜を中心に使用し、定番のプレーンとセルリー(セロリ)、羊の他、季節の素材を使った限定餃子がその時々に登場する。

プレーンはキャベツ、ニラ、にんにく、しょうがなど「とにかくいろいろ入れいています」と三輪さんのいうとおり、複雑に絡み合う素材の味が、分厚い皮に包みこまれることで絶妙に調和。力強い味の餡とそれに負けない存在感の皮の味わいが一体となったおいしさは唯一無二。

一転、他の餃子の餡はいたってシンプル。たっぷりのセロリが口中に爽やかな風を呼び込むセルリー焼餃子には、季節に応じた野菜をもう1種類と豚か鶏のミンチのみ。手刻みした大ぶり羊肉の野生味あふれる風味に、クミンなどのスパイスがアクセントになった羊焼餃子に使う野菜は玉ねぎだけ。それぞれ素材の味を存分に堪能できる。餡の個性に合わせて包み方もそれぞれ変えており、そこには「和菓子作り」の技術が活きている。どれも小ぶりの仕上がりゆえ、一人で2種類以上注文する客も多いとか。

 

今日は洋菓子?それとも和菓子?「あまいもの」もぜひ

餃子のあとでも重くない、あっさりした生クリームのショートケーキ

季節の味覚を使ったお菓子も見逃せない。だいたい3~4日ごとにメニューが変わり、洋菓子か和菓子が店主の気まぐれでラインナップ。1日限定のものもあるので、その日のお菓子がどんなものかは訪れてみてのお楽しみ。この日は「苺のショートケーキ」がスタンバイ。

愛媛県今治市「オオカミ珈琲」焙煎のコーヒーや紅茶と合わせるのはもちろん、「餃子とビールと合わせて白ご飯代わりに注文する人もいますよ」と店主。ここならではの組み合わせに目からウロコ。そんな楽しみ方があるとは!

 

昭和・民芸・埴輪……レトロな雰囲気が郷愁誘う店内

みこさんが大ファンの「Subikiawa食器店」への熱烈ラブコールで実現したオリジナルグラス
ひとつひとつじっくり眺めたくなる飾り棚

太陽の塔、埴輪、けん玉、こけし、だるまに赤ベコ……。飾り棚に詰まった店主の「好き」なものたちは、ある年齢以上の方の心にきっと響くはず。実際、40~50代の客が多いというのも納得。かの時代に思いを馳せながら過ごすひとときは、日常に疲れた心をほっと癒やしてくれる。そこにビールや日本酒とそれによく合うアテ、餃子、さらにあまいものとコーヒーまで揃うとあれば、もう言う事無し。

 

店があるのは心の友から受け継いだ大切な場所

ここはみこさんがずっと大切にしたい場所

「みこ」があるのは、かつて「喫茶オルガン」という喫茶店があった場所。みこさんは「喫茶オルガン」の常連でその店主夫妻は「心の友」といえる存在だったのだとか。「みこ」では「喫茶オルガン」で使われていた椅子やテーブル、食器などの一部を受け継いで使用。「喫茶オルガン」の気配の中に「みこ」の色を加えて、店主が大切に思うこの場所で、いま、新しい日々が育まれている。

「民藝と古墳と昭和」のイメージでオーダーしたというロゴも愛らしい