路地の奥の、静かな喫茶店

一乗寺の住宅街。知らなければ通り過ぎてしまいそうな細い路地の先に、静かに佇む喫茶店がある。店主手作りの焼菓子と、丁寧に淹れるコーヒー。世間の喧騒から少し離れ、ゆっくりと時間が流れる、そんな場所。
「国産レモンパイ」が登場するのは、3月頃から初夏にかけて。リボンのように絞られた生クリームにレモンピールの色が映え、見た目にも愛らしい。レモン好きの常連客が、毎年心待ちにする季節の定番。
サックリ、とろり。レモンカードたっぷりのパイ

パイ生地はサックリと軽い折込タイプ。それを土台に、農薬不使用の広島県産レモンを使ったレモンカードがたっぷりと敷かれている。果汁とピールに卵黄ときび砂糖を加えたカードは、きゅっと酸っぱく、やさしく甘い。そのバランスが心地よく、思わず顔がほころぶ。
純生クリームとともに口に運ぶと、酸味が柔らかく和らぐ。パイのサクサク食感、レモンカードのねっとりした質感、ふわっとろける生クリーム。三つの食感が重なり合って、最後の一口まで飽きさせない。
フルーティーな酸味が、レモンと響き合う

合わせたのは、中浅煎りのホットコーヒー。フルーティーな酸味がレモンの風味と重なり、口中で爽やかに広がる。気温が上がっていくこの季節に、これ以上ない組み合わせ。

豆は華やかでフルーティーな味わいのエチオピア産。中浅煎りのほか、芳醇で深い味わいの中深煎りとコーヒーらしいコクのあるデカフェも揃い、焼菓子やその日の気分に合わせて選べる。
ほかには、オーガニック和紅茶やチャイ、自家製ジンジャーエールも。ビールやグラスワインもあるので、スイーツと一緒に昼からグラスを傾ける休日もいい。
穏やかに時間が流れる、落ち着きの空間

古い民家を改装した店内は、重厚な梁はそのままに、木とモルタルで仕上げたシンプルな空間。ヴィンテージの家具が整然と並び、その中に自然の温もりが感じられる。

ガラス作家によるペンダントライトは、手作りの風合いが空間にしっくりと馴染む。店主は器好きで、平安神宮の蚤の市や北野天満宮の骨董市で少しずつ集めてきたそう。さりげなく供されるケーキ皿やコーヒーカップはどれも、店の雰囲気によく合う。

窓際のカウンターは、柔らかく差し込む自然光による陰影が美しい特等席。近くの書店「恵文社一乗寺店」帰りの客が、買ったばかりの本を開いている。そんな風景も、この店の日常。
「暮色蒼然」の頃に、また来たくなる

季節や天候、時間帯でその佇まいを変える店内。店主が特に好きなのは、夕方の陽が落ちる前の時間帯。それはまさしく、店名の由来となった言葉「暮色蒼然」の示す頃。一日の終わりの静けさの中で、店内の明るさが落ち着き、しっとりとした空気に包まれる。
その時間に、またここへ来たくなる。
