30年愛される定食店の「チキンなんばん」

叡電一乗寺駅から東へ徒歩5分、曼殊院道沿いにある定食店。長年近隣の大学生たちに親しまれてきたが、SNSで評判が広がり、今では地元の家族連れから観光客まで幅広い人々が足を運ぶ。
店主はホテルレストランやステーキハウスで腕を磨き、約30年前にこの場所で独立した。以来、客のニーズに合わせてメニューを柔軟に変えながら、現在は洋食を中心に提供。経験に裏打ちされた確かな腕から生み出される本格的な味わいが、ますますファンを増やしている。
「チキンなんばん」は、昼夜を問わず定食で味わえる人気メニューのひとつ。定食はどれも、ご飯、味噌汁、小鉢とともに、こんもり盛られたフレッシュサラダと惣菜が添えられ、野菜をたっぷり摂れるのがうれしい。丁寧に出汁をとった味噌汁は、深い旨みが体にじんわりと染み渡る。どちらも「あいかむ」の定食に欠かせない楽しみとなっている。
卵感たっぷりのタルタルと甘酢が織りなす至福のひと皿

チキン南蛮の楽しみのひとつといえば、店ごとに味わい異なるタルタルソース。ここのタルタルは、たっぷり入ったゆで卵の白身の食感と、黄身のコクがしっかり感じられ、卵好きにはたまらないおいしさ。玉ねぎのほか、酸味の強いものとマイルドなものを組み合わせたピクルスを入れており、酸味と甘みが上品に両立。軽やかな食べ心地なので、たっぷりとつけて頬張りたい。

ひと口食べて驚くのは、鶏モモ肉の柔らかさ。店主自ら筋や余分な脂を丁寧に下処理しているため、火を通してもしっとりとして、噛めばじゅわっと旨みが溢れる。小麦粉と溶き卵をまとわせて揚げたあとに絡める甘酢ソースは、酸味を抑え甘み際立つ味わい。タルタルとの相性も抜群で、仕上げにタルタルの上から甘酢をジュッとかけるひと手間で、ふたつの味が見事に調和。頬張るたびに幸せが広がっていく。
肉汁あふれるハンバーグをはじめ、多彩な定食が勢揃い

「ハンバーグ」も店おすすめの一品。一週間かけて丁寧に仕込む店主渾身のデミグラスソースは、深いコクと旨みがありながら、後味はすっきりと端正。さらりとした口当たりで、肉汁をたっぷり湛えたハンバーグの肉の存在感ある力強い旨みと溶け合い、噛むほどに味わいが厚みを増していく。理想的な半熟具合の目玉焼きが添えられ、とろりと流れる黄身をソースに絡ませれば、さらに奥行きのあるおいしさに出会える。
定食はほかにも種類豊富。梅おろしソースでさっぱりと味わえる一番人気の「チキンカツ」をはじめ、中華料理店さながらの「よだれ鶏」や「油淋鶏」、「テリヤキチキン」「ポークのスタミナ焼き」などの炒め物も揃う。さらに季節限定メニューもあり、秋から冬にかけては根強いファンの多い「カキフライ」が登場する。ほとんどの定食には、おかずが1.5倍になるLサイズを用意。
本格洋食と気さくな雰囲気が心地よく寄り添う一軒


できるだけ手頃な価格で、ボリュームのあるおいしい料理を出したい——その思いで約30年、店を続けてきた店主。そんな愛情がこもった料理は、長年にわたり学生たちの胃袋と日々の活力を支えてきた。アルコールも楽しめ、夜にはビールやワインを片手に、一日の疲れをゆっくり癒やす人の姿も。さまざまな人の行き交う親しみやすさの中で、本格的な味を楽しめる希有な一軒。
愛情こもった確かな味に出会える、街のグルメハウス

「シェフは仕事が大好きなんです」と、奥様はほほ笑む。どのメニューも手間を惜しまず丁寧に仕上げる料理は、長年そばで見てきた奥様にとってもすべてが胸を張れる自信作。「数人で来られたなら、ぜひシェアしていろんな味を知ってほしい」「頼んだメニューが口に合わなくても、別の料理ならきっとおいしく食べてもらえるはずだから」。そう語る奥様の言葉には、料理への愛情と客へのあたたかな心遣いがにじむ。
どれも「グルメハウス」の名に違わぬ料理ばかり。訪れた人それぞれのお気に入りの一皿が、きっと見つかるはず。