コーヒーとお菓子。変わらぬ佇まいで13年

左京区一乗寺の東大路通沿い。白川疎水近く、地蔵本児童公園のすぐそばに佇む、コーヒーとお菓子の店。2012年のオープンから、変わらぬ佇まいとスタンスで日々を重ねて13年。変わったことは、例えばBGMが流れるようになったこと、お菓子の種類が増え、菓子工房が誕生したこと、カウンターの上にショーケースが登場したこと。
ショーケースには、その日の焼菓子やケーキが種類豊富に揃い、旬素材を使ったお菓子も季節ごとに登場。秋から初冬にかけてのお楽しみは、りんごを贅沢に使った「タルト・タタン」。
りんごの瑞々しさを味わう、軽やかな「タルト・タタン」

りんごは、収穫時期に合わせて“紅玉”や“ふじ”などを使い分け、ときにはブレンドも。取材時は、減農薬栽培の“紅玉”を使った「タルト・タタン」が並んでいた。

りんごのカラメル煮は、火を入れすぎず、果実感を残した瑞々しい食感。苦みは控えめで、ほのかな酸味が爽やかに広がる。発酵バター香るサブレとダマンドのタルト生地は、フォークがスッと通るほどけやすさで、生地に染みたカラメルが香ばしいアクセントに。りんごと生地の、香りと食感が心地よく調和。注文ごとに泡立てる生クリームが、ひと口の印象をやわらかくまとめてくれる。
この「タルト・タタン」に合わせたいのが、浅煎りのシングルオリジンコーヒー。
なめらかで、丸い甘みの、丁寧な一杯

店では、オープン当初から扱う「WEEKENDERS COFFEE」(京都)による中煎りのブレンドのほか、「FUGLEN COFFEE ROASTERS TOKYO」(東京)や「STYLE COFFEE」(京都)による浅煎りのシングルオリジンを2~3種類用意する。

ドリップには店主ならではの工夫を凝らし、目指すのは豆本来の甘みが引き立つコーヒー。ひと口含めば、つるっと滑らかな質感で、丸みのある甘さがふんわりと広がる。浅煎りは、豆そのものが持つ果実味の余韻がすっと伸びる、穏やかな一杯に。フルーティーな香りに、「タルト・タタン」のりんごの瑞々しさがよく合う。
コーヒーに合わせた、軽やかな味わいのケーキと焼菓子

コーヒーに合わせて、軽やかであっさりとした味わいに仕上げるお菓子は、定番の「キャロットケーキ」をはじめ、愛らしいフクロウのクッキーでつくる「レーズンバターサンド」や季節のケーキが並ぶ。コロナ禍を機にお菓子の種類を増やし、テイクアウトにも積極的に対応するように。

焼菓子も多彩で、マフィン、パウンドケーキ、マドレーヌ、クッキーセットなどが日替わりで登場。スコーンは定番で、13時までの「スコーンブランチ」では、日替わり1種類と「塩バニラ」のスコーンに、ホイップクリームと自家製ジャムがつく。ごろりと大ぶりで満足感があり、遅めのモーニングやブランチにぴったり。もちろん、スコーン1つからも注文できる。
シンプルで、コーヒーが引き立つ空間で

コーヒーの味わいが引き立つようにと、シンプルに作り上げた店内。鉄骨と波状の鉄板を白く仕上げた天井のミニマルなデザインに、アンティークの家具や建具の質感がナチュラルに馴染む。自然光がやさしく差し込み、清潔感のある明るさが静かに落ち着ける空間をつくっている。

「13周年を迎えられたことは、私たちにとってすごく大きくて。大変なこともあったけど、乗り越えられたのは来てくださるお客様がいたから。ほんとうに心から感謝しているんです。続けるって自分たちだけではできないんだって、改めて実感しています。」と話す店主夫妻。静かに、確かに、積み重ねてきた日々は、訪れる人たちの想いに支えられて、これからも、この場所で続いていく。
