きのこのオブジェに囲まれたドイツ菓子は、10年間変わらない温かい味。


昨年11月、開店10周年を迎えた一乗寺のドイツ菓子店「FrauPilz」。ドイツ語で「きのこ婦人」という店名をそのまま表したように、きのこが大好きなマッシュヘアの店主・宮下さんが迎えてくれる。「きらびやかなお菓子ではなく、素材を活かす素朴なドイツ菓子に惹かれた」という宮下さんは金閣寺近くのドイツ菓子店、そしてドイツでの修業を経て自らのお店を開店。きのこのオブジェが所狭しと並ぶ、ユニークなドイツ菓子店として長年愛されてきた。
宮下さんがきのこを好きになったきっかけは20 代半ば、友人と出かけたフィンランド旅行。森の中のコテージで、生まれてはじめて自分で採ったきのこを食べたことが強く印象に残ったそう。「見た目がかわいいのもあるんですけど、きのこの合理的なところが好きなんです」枯れた植物を分解して自然に返す、”森の掃除屋さん”とも呼ばれるきのこの無駄のない存在自体も魅力なのだとか。
宮下さんはお菓子作りでも「合理的」を意識している。「季節のものはその季節に、美味しいものを適正価格でお届けしたい」と無理をせず、でも美味しさには妥協しないのが宮下さんのスタイル。”超合理的”と言われるドイツ人の気質につながる部分があるかもしれない。ドイツの「昔からのものを今も守る」姿勢にも共感する宮下さん、この10年で変わったことは「少しメニューが増えただけです」と笑う。それでも10年という月日は長く、開店当時3歳だった息子さんも今では13歳。宮下さんは「毎年誕生日ケーキを作らせていただくお子さまもいらして、お客様と一緒に歳を重ねられることがありがたい」としみじみすることが増えたという。ここまで続けることができた理由を「がむしゃらすぎない」ことだと語る宮下さんだが、そんな自然体で気さくな店主の人柄と、変わらない温かみのあるお菓子の味が愛され続けている理由なのだろう。

店内には各10種類ほどのケーキや焼き菓子が並ぶ


マッシュルームの形をしたメレンゲはサクッとした食感で、わたあめのように甘く口の中で消えていく。(324円)一番人気のきのこ型クッキーはほろっとやさしい口触り。甘さのバランスが絶妙。(432円)

ドイツの定番お菓子「シュヴァルツヴェルダーキルシュトルテ」。チェリーリキュールが香るクリームはふわっと軽く、甘さ控えめ。(464円)

存在感を放つきのこのオブジェ。他にも様々なきのこが。