思いがけなく始まったスパイスカレーの道。導かれ引き継いだ、名物カレー


かつて賑わっていた1軒のバー。惜しまれつつ2020年の暮れに幕を閉じたが、店内からは今も談笑の声が聞こえてくる─。

スパイス香る店内で一人カウンターに立つのは、村上綾さん。「シェリーバーKAO」の名物カレーを引き継いで、現在も営業を続けている。「カレーが好きで好きで始めた、というわけではないんです」。以前は洋菓子の販売員を17 年間続けていたという村上さん。独立を夢見て退職した際、このバーでアルバイトとして働き始めた。「ゆくゆくは自分で飲食店を始めたい」という村上さんの思いを知ったオーナーから、人気メニューのカレーでランチ営業してみないかという提案を受け、カレー作りに挑戦することに。

「やりますってよう言えたな」と笑いながら当時を振り返る村上さん。実は料理は作るよりも食べる専門で、スパイスカレーのことも全く知らなかったという。「はじめは不安やった。できるんかって」。何もかも分からない状態からのスタートだったが、それでも村上さんは諦めることなくスパイスカレーと向き合い続け、2年かけてオーナーの味を引き継いだ。「もともと人から愛されていたものを作れるようになって、それだけで何があっても生きていける」と、いつの間にかスパイスカレーは村上さんを支える大きな財産に。

「縁に繋がれてここにいるんです」。前職の洋菓子の販売員も友人から引き継ぐ形で始まり、このバーのアルバイトに出会ったのも知り合いのつながりから。気づけば、オーナーからの提案でスパイスカレーの道へ。“周りの人にいただいたチャンスばかり”と何度も口にする村上さんだが、そのチャンスを逃さずつかんできたのは「ほなやってみよか」という彼女の決断力と勇気があったからこそだろう。「こういう生き方もあるんですよ」と話す村上さんの笑顔に、ふっと心が軽くなるのを感じた。

国産黒毛和牛の牛すじキーマとエビのビスクカレー


国産黒毛和牛の牛すじキーマとエビのビスクカレーをあいがけ。エビを殻ごと調理するビスクカレーは、エビの旨みと甘みが口いっぱいに広がる。あいがけ1,200円

自家製のフルーツ酒がカウンターにずらり。ローズマリーがふわっと香る爽やかなレモン酒はカレーのお供におすすめ。

スパイスの香りと目玉焼きがジュワーと焼ける音に思わずよだれが。「ハッピーなときでも、疲れたときでも来てほしい」と村上さん。